「思春期」と呼ばれる10歳から17歳頃までは、第二次性徴により著しく体が成長しますが、それは外見の変化だけではありません。骨密度は16歳から20歳でピークを迎えるまで大きく上昇し、精神的には自我が芽生え、内面的にも大きな成長が訪れます。
しかしこの時期は、その成長につながる肝心の食事がおろそかになりがちです。家族から離れて一人で食べたがる孤食（個食）傾向があり、一人でスナック菓子や菓子パンの買い食いをしたり、自分の嗜好のままに偏った食事を続け、栄養上の障害を起こすケースもあります。
また女性の場合はファッションや流行に影響され、「痩せ願望」が強くなる時期でもあり、特に近年はそれが顕著であると思います。十数年前にミスユニバースの審査員として参加した際は、審査の基準は容姿とともにＢＭＩ〔体重（㎏）÷身長（２ｍ）で算出。標準は22、肥満が25以上、痩せすぎは18.5以下〕が重視され、ミスユニバースにはほぼＢＭＩ22＋αの人が選出されました。ところが、近年は痩せている18.5以下でないと優勝できないのです。海外では８年前からこの風潮に危機感を感じ、マドリッドやパリ、ニューヨークなどのモデルクラブではＢＭＩ18・５以下はモデルにしないと決定しました。
痩せ願望がつのり、欠食や減食が多くなるとエネルギーだけでなく、タンパク質、カルシウム、ビタミン、鉄など多くの栄養素が不足し、十代で無月経になったり、女性の機能にもさまざまな弊害が生じます。
また偏食や欠食の恐ろしい点は、体の成長だけでなく精神的な成長も阻害することです。この時期は自立のための様々な感覚を養う大切な時期ですが、栄養素が不足すると無力感や思考力の低下につながり、正常な成長に悪影響を及ぼします。
野菜や魚介類など食材の一つひとつに旬があるように体の成長にも旬があります。大人になってから思春期のころを取り戻すことはできません。私たちの体も食材も、大切な時期を見極め、その時々しか味わえない食事を大切にしていってほしいと思います。
服部栄養専門学校
理事長・校長 服部幸應
記事提供元：『さわやか』2013年夏号 制作／社会保険研究所
