卒業生の声 小山 弘美さん

Graduate's Voice

週に3日だけ営業する
日本橋のスイーツショップ & カフェ

Hiromi & Co.
オーナー・シェフパティシエ
小山 弘美さん

調理師本科(昼1年)卒業

小山 弘美さん

地下鉄・小伝馬町駅から歩いて3分ほど。路地に面して佇むスタイリッシュな店舗が、スイーツとコーヒーが楽しめる「Hiromi&co. -sweets & coffee -」。
店内に入れば、白を基調としたモダンなインテリアと愛らしいスイーツが出迎えてくれる。ガラスで囲まれたキッチンでは、グレーのコックコートを身につけたシェフパティシエが黙々と手を動かしていた。アフター5ともなれば、近隣の企業に勤める人たちがテイクアウトのスイーツを買いに来たり、奥のカウンターで、スイーツとコーヒーをゆっくり楽しんだり。人々の憩いの場となっている。そんなスイーツ&カフェのシェフパティシエが、今回の主役、小山弘美さんだ。店を開けるのは週3日だけ。あとは仕込みや新作に専念するという。

子どもの頃から、旅館の板前として働く父親の姿を見て育った。「父はいつも楽しそうに仕事をしていて、いつしか私も父のような料理人になりたいと思うようになっていました」と小山さんは言う。しかし、料理人の世界はまだまだ男社会で、仕事もきつい。娘に苦労させたくないと、お父さまは小山さんが料理人になることに反対したという。「それで料理人になることはあきらめて、一般企業に入り、OLとして3年勤めました」しかし、料理人になる夢は捨てきれず、会社を退職。就職しようと考えていたイタリア料理のレストランのシェフに「まずは学校へ行って、自分に向いている分野を見極めたほうがいい」とアドバイスされ、専門学校へ行くことを決意する。服部栄養専門学校を選んだのは、数ある調理師専門学校のなかでも一番良い学校だと感じたからだ。「実際に入学してみると、フランス料理やイタリア料理だけでなく、日本料理や中国料理、製菓・製パンまで学ぶことができて、自分の適性を考えるきっかけになりました。そんな時、私がどんな料理を作ってもいい顔をしたことのなかった父が、スイーツを作ったときだけは〝お前、お菓子はいいなぁ〞と言ってくれるようになったのです。その頃になると、私自身もスイーツのほうが向いているかな、なんて思うようになっていて……。ただ、どの道に進もうか、もやもやしている時期があって。それを知った先生が『だったら方向性が決まるまでウチで働いてみたら』と声をかけてくださり、服部学園の職員採用試験を受けました。やりたいことに繋がる縁を作ってから、やりたいことにチャレンジするのでもいいんじゃないのかな、という意見をもらって、じっくり考えようと思ったのです」

最終面接で服部校長から「食に関するいろいろな情報が入ってくる秘書課がいいんじゃないか」と言われ、秘書課に5年間在籍。横の繋がりもできた。国内外のシェフと接するなかで、渡仏も視野に入るようになってきた。さらに、ヨーロッパ研修旅行も自分をパリに向かわせるきっかけになった、と小山さんは言う。「服部学園で働くようになって、広い食のフィールドを自然に俯瞰で見られるようになりました」 パリでは、オードリー・ヘップバーンに憧れて「ル・コルドン・ブルー」に通い、インターン時代はパリ12区のパティスリーとブランジェリーが一緒になった小さな店で研修。「少人数でたくさんのものを作るという経験が積めたし、それは今の仕事にも生きています。ウチでは、商品はすべて私が作っているので」と話す。 さらに、駐在員の奥様達から依頼されてお菓子教室を開いたり、出張シェフをやったり、マレ地区のプライベートレストランでシェフとして2年間働くこともできた。「80人規模のパーティを一人で担当したこともありました。あの頃は、何でも貪欲に経験しようと思っていましたね。服部学園に入ったことで、私の人生の扉が開きました」と小山さんは笑顔を見せる。

そんな日々のなかで、デザインの勉強をするためにパリに来ていたご主人と知り合い、結婚。帰国後は、ご主人の仕事をサポートしたり、料理人としての経験を生かして食関連の店舗や通販、レストランなどへのマーケティングや商品開発コンサルティングを行っていたという。「パリでの5年半はやりたいことができたので、今度は主人を支えようと思ったんです」 現在も、スイーツ作りは小山さんが、店舗の内装やロゴデザインなどはご主人が担当するなど、二人三脚でお店を切り盛りしている。「私は服部栄養専門学校に入って勉強するだけでなく、秘書として働く機会を得ることもできました。これから世界へ羽ばたこうとしている人達には、いろいろな経験ができる場所に自ら飛び込んでほしいと思っています。学校は、ただ調理師免許を取得するだけの場所ではありません。視野を広げることができるフィールドでもあるのです」と小山さんは後輩たちにエールを送る。

この地に店を開いて約2年。日本橋の内外に様々な繋がりを育む食みやげ「第2回つなぎふと」プロジェクトにも参画。企画会議にも参加する。一歩ずつ、この地の〝住人〞になって、仲間とともに地域を盛り上げていく日々だという。「お店のコンセプトは『肩肘張らずにフランス菓子を楽しんでほしい』。食べること=生きること。それを大事にしたら、周りも自分も大事にできると思っています」
今は、通販やギフトに対応できるよう新たな工房の準備中です、と続ける。「興味を持ったら行動に移す」と話す小山さんだけに、その挑戦はまだまだ続きそうだ。

※料理王国「2023年2月号」に掲載された記事です。

Hiromi & Co.

週に3日だけ営業する日本橋のスイーツショップ & カフェ

地下鉄・小伝馬町駅から歩いて3分。店内にはフランス菓子の魅力がギュッと詰まったスイーツが並ぶ。

https://hiromiandco.com/

店舗内観

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