卒業生の声 呉 知宣さん

Graduate's Voice

国境を越えて店舗経営に生きた服部での学び。
食の基本を知れば仕事の幅が広がり、人生が豊かになります。

妻家房
呉 知宣さん

調理師本科(昼1年)/2005年卒業
栄養士科(昼2年)/2009年卒業

料理を学ぶことになったきっかけは何ですか?

父が飲食業を営んでいるので、幼い頃から料理は身近なものでした。とはいえ、私自身はまったく料理ができなくて。食べるのは好きでしたが、作り方は知りませんでした(笑)。
高校(日本の韓国人学校)から大学へ進学するとき、将来父の仕事を手伝うことも視野に入れて韓国のソウル大学食品栄養学科へ。大学卒業後、実際の料理の技術を身に付けるために服部栄養専門学校調理師科で学ぶことにしました。

服部を選んだ理由は何ですか?

当時から服部は留学先として韓国で有名でした。そのころは服部先生もテレビで活躍されていて、知名度が高く学生の間で人気校でした。しっかりとした知識をちゃんとしたところで学ぶなら服部、というイメージでしたね。

服部に2回入学し、2つの資格を取得されたのはなぜですか?

調理師科卒業後、現場経験を積むうちに栄養学の必要性を感じて再入学しました。調理師だけだと職業が限られますが、栄養士の資格も持っていれば幅が広がりますし、シェフになった場合でも栄養士の知識をプラスしてより良いものを提供できると考えました。

服部の授業で印象に残っている授業は?

理論より実習の方が思い出深いですね。服部に入学するまで私はほとんど料理をしたことがなかったのですが、包丁の持ち方、扱い方から素材の特徴、さまざまな調理方法、基本的なことをすべて体験しながら学ぶことができました。例えばアスパラガスと卵を使ったシンプルな料理。アスパラは数秒の絶妙の差で味や硬さが変わるということを知って感動したことを覚えています。

やるならとことん学んでやろうと思っていたので、授業外に実施されるマスターコースも積極的に受講しました。ジャンポールエヴァンさん、ロブションの総料理長など、毎回豪華なゲスト講師に驚きました。高級店に行けなくても、高級店のレシピと作り方をシェフから教えてもらえれば自分で作れてしまう。これってすごいことですよね。これは服部でなければ体験できなかったことだと思います。

栄養士科の実習では「加工学実習」が面白かったです。沢庵をつけたり瓶詰めする体験が印象的でした。

服部栄養専門学校での交流や思い出は?

パティシエの授業で毎年クリスマスケーキを作ったこと、学園祭でパウンドケーキを作ってみんなで販売したことが楽しかったです。先生や仲間と一緒にひとつのことに楽しく取り組んで盛り上がったことがとても印象に残っています。学校帰りに同級生と高島屋のデパ地下に立ち寄って将来について語り合ったりしたことも、今では懐かしい思い出です。

勉強したことが役に立ったと実感したエピソードを教えてください。

調理師科での学びは、妻家房でのメニュー作りのヒントになっています。ゆずのパウンドケーキ、キムチドリアなどは、学校で学んだことを生かしてアレンジしたものです。

また、レストラン運営にも大変役に立ちました。お店の企画から運営までトータルに考えて実行していく上で、調理を学んだ経験があるとないとでは現場のシェフからの信頼度も変わってきます。

栄養士科での学びは、韓国で威力を発揮しました。当時、韓国は衛生面の意識が日本と違っていて、食中毒につながる重要な基礎知識が不足していると感じました。韓国のスタッフに衛生面、整理整頓を教えていくことから始めなければなりませんでしたが、服部で勉強したことが頭に入っていたおかげで改善していくことができました。

仕事以外の場所でもいろいろと学びが生きています。桂剥きやアジの三枚おろしなどは、主婦になった今、習っておいてよかったと思いますね(笑)

仕事の経歴を教えてください。

服部卒業後は父の会社へ就職しました。最初に携わった仕事は、日本橋の商業施設内の店舗の立ち上げでした。その後2009年、韓国ソウルの日本料理店「Tokyo Saikabo」の総責任者として出店を手掛けることに。東京・恵比寿の日本料理店「賛否両論」の経営者であり料理人である笠原先生とコラボという形でメニューを一緒に作り、笠原先生推薦の日本人スタッフや日本語のわかる韓国人を起用してオープンしました。現在「Tokyo Saikabo」はソウルに4店舗あり、多くのお客様で賑わう人気店となりました。

韓国の日本料理店「Tokyo Saikabo」が軌道に乗るまで大変だったことは?

韓国で日本料理店を出すのは想像以上に大変でしたね。もっとも頭を悩ませたのは、味の濃さです。日本料理は醤油をよく使いますが、韓国では醤油の辛さが「しょっぱい」「塩辛い」と感じてしまうようで、韓国の大衆向けに調整が必要でした。来店の大半を占める韓国人のお客様に受け入れてもらうため、試行錯誤しました。

国が違えば味覚だけでなく食べ方の習慣も違うんですよね。例えばそばつゆ。日本ではちょっとだけ付けてすする食べ方ですが、韓国の人はどっぷりとつけて混ぜそばのようにしてしまいます。食べ方を教えても、習慣はそう簡単には変えらるものではなく、難しいと感じました。見た目も味も日本のものだけど、韓国でも「日本食」として美味しいと受け入れられるように、さまざまな工夫を重ねました。

現在の活動を教えてください。

結婚を機にシンガポールに移住し、ここ数年店舗経営には関わっていないのですが、自宅でクッキングクラスを開いて日本料理や韓国料理を教える活動をしています。
シンガポールに住んでいる一般の方を対象に、韓国の方には日本料理を、日本の方には韓国料理を教えています。日本語・韓国語両方を話せること、そして服部で得た料理の知識が今の活動につながっています。

これから料理を志す学生に対してメッセージをお願いします。

人は食べたものでできています。「食」は人にとって一番身近で重要なもの。どのような生き方をするにしても、食の基本は知っておいた方がいいと思うのです。

外国に行くと初めて見る料理や食材に出会いますよね。そんなときも、勉強したからこそ美味しさの理由がわかり、より一層奥深さを楽しむことができます。キムチにしても、食べすぎるのは塩分摂り過ぎになってよくないとか、正しい知識があれば栄養面も自分でコントロールできるようになります。

料理専門学校を卒業したからといって、必ず一生飲食の仕事とは限りませんが、服部で得たものは確実に人生を豊かにしてくれるはず。服部での学び、先生方との出会いが、私の人生を豊かにしてくれました。

Tokyo Saikabo

来店の大半を占める韓国人のお客様にも好評の「日本食」

韓国ソウルに4店舗あり、多くのお客様で賑わう人気店。

Tokyo Saikabo 内観

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